私は男を見る目がないらしい。
*私は男を見る目がないらしい 「別にいいだろ?男を見る目がなくても」
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「お疲れさまでーす」
ノックが聞こえたかと思えば、突然部屋の中に飛び込んできた聞き慣れた声に、私はビクッと反応してしまう。
それと同時に、手にしていたマウスを手から離してしまい、カタタッと鳴らしてしまった。
……ま、待って。
何で朔太郎がここに来てるの!?
昨日、「しばらくは会社では秘密にしておこう」なんて朔太郎から言い出したくせに!
もちろん私も恥ずかしいし良い案だと即OKしたのに、何で……っ!
仕事の定時が1時間ほど過ぎた頃に訪れた突然の出来事に、私は完全にパニックになって仕事どころじゃなくなってしまっていた。
まさかの朔太郎が、私が仕事をしている部屋に現れたからだ。
ここで私と朔太郎が付き合ってることがバレたら、今後にいろいろと影響する。
私の頭に浮かぶ想像は……からかわれ三昧の日々……。
いや、そんなのダメだ。
耐えられない。
隠し通さなきゃ……!
とりあえず……今は静かにして居ないふりをしておこう……、と私は物音を立てないように、ひっそりと佇む。
「……誰もいないんですか?」
窺うような声を出し、朔太郎がコツコツと靴の音を立てて部屋の中に入ってくる。
だ、誰もいません!私は空気です!
コツコツ、と足音が確実に近付いてくるのを感じながら、バレませんように!と私は祈るように身体を縮める。