私は男を見る目がないらしい。
 

……朔太郎が唇を離してくれたのは、唇を合わせ始めて何分も経った後のこと。

すっかり力の抜けてしまった私を支えるのは、紛れもなく朔太郎だ。

髪をすくように頭を撫でながらも、耳をいじったりしてくる朔太郎の手の動きは、あの頃と何も変わっていない。

そして私もあの頃と同じように反応してしまう。

抱かれ心地は全く違うけど、あの頃と同じ安心感があるのが不思議でたまらなかった。

……っていうか、私、何をしてるの?

元カレからのキスを受け入れちゃうなんて、後で虚しくなるだけなのに、自分で自分の首を絞めるようなこと……。


「……はぁ。悔しい」

「……は……?」


ぽつりと聞こえてきた朔太郎の言葉の意味がわからず、私はつい聞き返してしまう。

悔しい、って私の台詞でしょ?

……こんなに腰砕けにされて。

翻弄されて。

一気にあの頃の気持ちを引き戻されて。

悔しいどころじゃないんだけど。

 
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