私は男を見る目がないらしい。
「お疲れ様ー」
「あ。三浦さん、お疲れ様です。もう終わるので、後1分待っててください」
直属の上司である三浦(みうら)さんが部屋に入ってきて、視界の端に私の方へ向かってくるのが見える。
きっと案件資料を渡すためだろう。
先輩を待たせているとは言え、慌てずに私は手元を動かし、調整をしっかりと終わらせる。
「よし。終わりっ。お待たせしました」
「いや。大丈夫だよ」
「これ終わったら三浦さんのところに行こうと思ってたので、ちょうど来てくれて良かったです」
私のその言葉に三浦さんは表情を曇らせ、ぽつりと溢した。
「……なんか、嫌な予感がするなぁ……」
「……。その予感は当たりですね、たぶん」
「うーん……聞きたくないな……」
「でも言いますけどね。部長からの伝言で“今日の午後、会議に出てくれ。午後一で私のところに来るように。”だそうです」
「うあ~やっぱり……、せっかくの金曜日なのに、一気に憂鬱になった……」
「あはは、ドンマイでーす。」
「はぁ。棒読みの“ドンマイ”ありがとう。相原さん。……頑張ってくるよ……はぁ。あ、これ。そんなに時間はかかるものじゃないから、月曜の夕方までに評価お願いできるかな?」
三浦さんに差し出された資料を受け取り「了解です」と引き受けたけど、三浦さんの表情は晴れない。
午後からのことを考えると、相当憂鬱なのだろう。