私は男を見る目がないらしい。
「ねぇ、みお~。なにこの手~?」
「やっぱり聞かなくていい、っていう制止の手。聞かなくても香代子の声の高さだけで十分、旦那さんとはうまくいってるってことがわかったから。それ以上の惚気なんていりません。」
「なにそれーっ?話したいのにっ!聞いてよ聞いてよ~っ!」
「いえ。遠慮しときます。」
「酷いー!みお、冷たさに磨きがかかってるよーっ!」
ぶぅと唇を尖らせてじとっとした目で私を見てくる香代子とその言葉に、私はウッと言葉を詰まらせてしまった。
……だ、ダメダメ。
幸せオーラを出されてしまって、つい私と香代子との雲泥の差にすさんでしまった。
そんなの大人気(おとなげ)ないじゃない!
もういい年なんだし、大人の余裕を見せて穏やかに行かなきゃ、うん。よし。
私はそう言い聞かせて、にっこりと笑顔を作った。
「そ、そんなことないよ?ねっ」
私は無理矢理、気持ち悪いくらいに声のトーンを上げて、ご機嫌を取るようにして香代子に向かって笑顔を作った。
そして、私は香代子に向けていた手のひらを引っ繰り返して天井に向ける。
「……さ。ぜひぜひ、続きをドウゾ。どんな話を聞けるか楽しみダナァ。」