私は男を見る目がないらしい。
「……朔太郎、転職でもするの?」
「……いや、えっとー……」
口ごもる朔太郎。
さっきと同じように気まずそうにしていて、私とは目を合わせない。
別に転職は悪いことじゃないし、やりたいことがあるなら応援するのに、何ではっきり言わないの?
……もしかして、さっきの隠し事の原因は、この履歴書?
「さ」
「あー、わかった。言う。言うから、ちょっと待って」
私が口を開こうとすると、それを制するように朔太郎が言葉を発してきた。
はぁ、とため息をついて、キッチンに向かい、コンロのガスをカチッと消す。
そして、私の方に戻ってきた。
「美桜」
「な、何?」
私を見下ろす朔太郎の表情はすごく真面目なもので、しかもさっきまではあんなに私から目を逸らそうとしていたのに急にじっと目の奥を見つめられて、私は怯んだ。
……そう。怯んだのは、私。
だったはずなのに。