私は男を見る目がないらしい。
 

人前で泣くのは嫌い。

なのに、朔太郎の前だと自分の意思に反して身体が勝手に反応してしまうんだ。

素直な気持ちと身体が連動する。

やっぱり流れる涙が嫌で、掴まれている手を無理矢理朔太郎の手の中から引き抜き、涙をぐいぐいと拭った。


「うー……、もう……っ、やだ!」

「……何か、情緒不安定じゃね?泣くよりも、もっと怒られると思ってたんだけど。大丈夫か?」

「そ、そういう時期なのっ」

「……あー、なるほど。だから体調悪いのか」

「!バカっ!」


女の身体の事情をあっさりと理解されてしまって、すごく居心地が悪くなった。

ていうか、そんなに簡単に理解できるってことは、そういう状況に慣れてるってこと……?

今まで付き合ってきた彼女の中にも同じように生理痛が酷い人がいたのかもしれない。

……って、何バカなこと考えてるんだろう。

昔の彼女の存在を気にするなんて。

私は嫌な考えを頭の中から消したくて、ふるふると小さく頭を振る。

過去のことを持ち出すようなウザい女には絶対になりたくないし、余計なことは考えないようにしよう……。

昔もそうだったけど、朔太郎といると嫉妬とかいろんなもので自分が嫌な女になってしまいそうになって、何か怖いんだ……。

でもそれは、それだけ私が朔太郎のことが好きだってこと。

 
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