私は男を見る目がないらしい。
 

その言葉は明らかに棒読みだったにも関わらず、私のコロリと変えた態度に対して香代子がぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべ、口を開いた。

……単純な友人だ。


「うんっ、聞いて聞いてっ!うちの旦那ってばねっ、こないだ」

「何?相原さん、荒れてるっぽいけど何かあったのか?あ、もしかして彼氏とケンカしたとか?」

「は?」

「え?」


香代子のきっと長くなるであろう話が始まりそうになった瞬間、すぐ近くでカタンとテーブルにグラスを置く音がして、男の声が割り込んできた。

私と香代子は突然会話に入ってきた人物に目を向ける。

そこにいるのは頬杖をついてにっこりと笑う男。

……なかなかのイケメンだ。

…………ん?

っていうか……、誰だ?

 
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