私は男を見る目がないらしい。
一通り部屋の中を見回った私に一気に襲いかかったのは不安。
連絡もなく、部屋にいないなんてこと、はじめてだから。
どうして?
何で家にいないの?
朔太郎は一体どこにいるんだろうか?
もしかして、何かあった……?
大丈夫なのかな?
さーっと血の気が引いていき、お酒で熱くなっていたはずの身体は寒ささえ感じるくらいになってしまった。
どうしよう、何か朔太郎の様子がわかる方法は……あ、連絡取ればいいんだ!
はっと気付いた私が携帯をバッグの中から取り出した時だった。
朔太郎の姿を見つけることに神経を向けていたから気付かなかったけど……
「……何で、何もないの?何で?」
朝まではそこにあったもの。
いや、朔太郎がここに来てからずっとあったものが今はないことに気付いた。
朔太郎は来てからずっと、部屋の隅に自分のボストンバックを置いていた。
「邪魔だしどこかに仕舞ってよ!」と朔太郎に何度も言ったんだけど、「……嫌。そこに置いときたいんだよ」と言って聞かなかった。
一度、痺れを切らした私がクローゼットに仕舞ったことがあったんだけど、いつの間にかまたそこに出されていた上、「そこに置いといて」と機嫌悪く言われてしまって、もう片付けるのは無駄だなと諦めていた。