オムライス男子とマシュマロ女子


梅はとても賑わっていた。


紅色した梅は限界まで空に伸びをして、ピンク色した枝垂れ梅は完璧な曲線を描いている。白い梅は悠然と漂って。


「わぁ、綺麗‼」


庭園を歩く。


微妙な距離で。


確か脳内では、あたしが蹴躓いたのをキッカケに、先輩が手を引いてくれた。


試しに蹴躓いてみたが、黒ジャージは振り向きもしない。


おかしい。


黒ジャは、梅の木に向かってシャドーボクシングをしている。


「あの先輩、座りませんか?」


あたしはベンチを指差して座った。


最後のアッパーカットがキマったらしく、隣に先輩が座る。


よしよし、脳内に近づいた。


あたしはリュックの中から、お弁当を取り出して、膝の上に広げる。


「朝から作ったんです」


うん、ウソは言ってない。


朝からこのオニギリの、海苔が大きいのでカットしたもの。


んで、それ以外は全部、お母さん作、です。


お母さんのお弁当は、ほんとカラフルでバランスよくって、味は最高で、食べる人がみーんな笑顔になる。


でも食べたら、の話。


「あ、俺、昼とか食わねー人だから」


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