オムライス男子とマシュマロ女子


「い、いらない」


掠れた声しか出ない。


「またダイエット?」


「またで悪かったな。いらない」


少し声を張ってみる。


「体に悪いよ」


「へーき」


「ちゃんと食べないと」


「それ以上、言うな」


そう。


お願い。


それ以上はやめろ。


きっとハマチは、あたしのダイエットという、吹けば飛ぶよなお城を、鼻息で壊してしまう。


「ニンジンカップはカロリーあんましないから」


ほらきた。


滑らかな方向からきたじゃないか。


「じゃ、一口(一個)」


と、今までのあたしなら手を伸ばしていた。


一瞬の恍惚のあとには、後悔という残骸。


そして何も変わらないんだ。


何も変わらないから、何も変えられない。


何かを変えたいなら、あたしが変わらなきゃいけない。


あたしはただ、グッと押し黙っていた。


「じゃ、おばさんたちに食べてもらっ」


「持って帰って」


有るとあたしが食べるから、とは言わず、リビングを出た。


チラリと見えたハマチの横顔が、少し悲しく見えて、余計にあたしは悲しかったんだ。


ごめんなさい。



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