オムライス男子とマシュマロ女子


「本当はお母さんたちみたいに、さくらんぼになってほしかった」


あたしは、さくらんぼを思い浮かべる。


赤くて可愛い、さくらんぼ。


「でもね、人を愛するってことは、男も女も関係ないの。あなたとハマチ君が、さくらんぼになったらきっと、誰にも負けない味になるんだけどな」


それだけ言うと、お母さんはキッチンに戻っていった。


台所がお母さんのお城。


いつもの後姿と、今日は楽しげな鼻歌が聞こえてくる。


あこそから、奇跡が次々と生み出されるんだ。


少し冷めた紅茶を飲み干して、あたしは決めた。


ダイエットはやめる。


やめたんだから、にんじんカップ食べてもいいよね?


無性に会いたくなってきた。


さくらんぼの片割れに。


夕暮れ時。


あたしは家を飛び出した。


雨が。


降りそうだった。


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