オムライス男子とマシュマロ女子
家から出てきたハマチとかち合った。
「なんか用事だった?」
「あ、うん。あたし、ダイエットやめたから」
あたしは高々と宣言した。
ダイエットを始めることを、ではなく、やめてしまうことを。
それでもハマチはやっぱり。
「そっか。それがいいよ。無理とかしなくていいし。にんじんカップ作るよ」
少しテンションが上がり気味に畳みかけてくる。
嬉しいけど、ずっと甘えているわけにはいかない。
ずーっと、片方のさくらんぼが重たくぶら下がっているわけにはいかない。
「にんじんカップ、マリリンに作ってあげなよ」
「うん?ああ…」
ハマチは視線を落とした。
肩からぶら下げている、大きめのトートのカバン。
「あ、もう作ったんだ」
「うん。お弁当とか。これから公園」
「きっとマリリンもイチコロだね」
「そうかな?」
「そうだよ」
ちょっと、声が大きくなってしまった。
そんな棘のある声、出すつもりじゃなかったのに…。
「ハマチ…マリリンのこと、好きなの?」
あたしは、何を訊いてるんだろう?
あたしは、何を期待しているんだろう?
ハマチは、あたしの聞きたい答えを言うはずなんだ。