オムライス男子とマシュマロ女子
傘もささないで。
「ハマチ?…濡れるよ?」
あたしは傘を差し出したが、押し戻された。
「屋根のあるとこで待てばいいのに」
と言ってから、待ち人が来たらないことに気づいた。
「風邪、引くから」
もう一度、傘を差し出した。
よく考えてると、この傘くらいじゃ、ハマチの大きな体は守れない。
そしてもし、大きな傘でハマチの体を守ることができたとしても、心を温めることはできるだろうか?
あたしが抱きしめれば、ハマチの心は暖かくなるのだろうか?
「魚はたまに、水が欲しいんだ」
ハマチは空を見上げ、雨を顔に受ける。
真っ黒な空を眩しそうに見上げ、ほんの少し、笑っている。
「帰ろう」
あたしは、ハマチの丸太みたいな腕を掴んだ。
けれどハマチは動かない。
名残惜しそうに、カバンに視線を落とす。
そうだ。
にんじんカップ。
「あたし食べたい。あたし、食べたい」
「うん」
ハマチがカバンから取り出したタッパーの中に、所狭しとカップケーキが。
一つ手渡され、あたしはかじった。
ふんわり。
優しが心を包み込む。