オムライス男子とマシュマロ女子
「美味ひー」
美味ひーんだけど、涙が止まらない。
美味ひーからきっと、止まらないんだ。
瞬く間に一個(一口で)を平らげたあたしは、お弁当を指差した。
「いいよ、無理しなくて」
「無理っ、してない‼」
あたしの剣幕に驚いたのか、おずおずと弁当箱の蓋を開ける。
まずはおにぎり。
これがまた、ちょうどいい握り具合。
中の具はおかかだ。
途中、リアルすぎるタコさんウインナーに、何層にも重ねられた玉子焼き、唐揚げはよく味が染み込んでいた。
こりゃご飯も進むってもん。
無我夢中で食べるあたしは、幸せで心が和むのを、はっきりと感じた。
と同時に。
「ごめん…ハマチー、ごめん」
一口食べては謝り、謝っては、おにぎりを頬張り。
「あたしっ、ダメなの。ハマチじゃ、ダメなのー」
「うん」
「ハマチだと、自分がっ、自分がダメになるっていうか、どうしても、もっ」
「うん」
「ごめん。美味しい。でも…ハマチのことキズつけて、ごめん」
「うん」
「あたし、ひどいこと言ってるんっ、でも、でも、凄く美味しい。美味しいよ、ハマチ」
「うん」
ハマチは目を細めて、ただ聞いてくれていた。
優しく。
微笑みながら。