オムライス男子とマシュマロ女子
オムライス女子
春休みに入り、あたしは一つ決意したことがある。
お母さんにそのことを伝えると、涼しい顔で「あ、そう」と言ったが、とんでもなく喜んでいることがわかった。
隠したってダメ。
何年、親子やってると思ってんの?
「無理強いはしたくなかったの。自然と、やりたくなるまでね」
「うん、それはいいけど、まだ?」
「まだ。それから手を休めない」
ピシャリと言われ、泡立て器をガシャガシャとやる。
もう、だいぶん泡立ってますが?
「まだ。もっと早く」
「…」
無言でかき混ぜる。
わぁ‼卵の白身が、こんな風になるんだー‼って、驚いたのは初めだけ。
料理って、体力いるのね。
それからもあたしは、お母さんに料理を教わった。
っていっても、いい野菜の選び方から切り方、洗い方一つまで細かい。でも、この細かい気遣いが、美味しさを生み出すと、もうなんべん聞いたことやら。
あたしはキッチンに立った。
ふふふ。
今日は鬼が居ない。
静かに、腕まくりをした。