駅のホームとインディゴブルー
番外編

分析する

よく知りもしない人のことを「すき」だと思い、そして伝えてしまうのは、とても軽い、敬遠されて当然の行為だと思っていた。

だってまだ見ぬ知らない部分もすきだっていう保証なんてある?

もしかしたら極度のマザコンかもしれない。

デートに親ついて来たらどうする?

それから、例えば暴力振るうような人っていう可能性だってある。

浮気性かもしれないし、そんなに大げさな話じゃなくても、自分がアウトドア派なのに相手がインドア派とか、目玉焼きには醤油派かソース派か、そんなことの違いが受け入れられないこともある。

実際に「そんな人だと思わなかった」といって別れたカップルを、中学でも高校でも何人も見てきた。

自分はそうなるまいと、いつだって慎重に生きてきた。

「じゃあ一目ぼれは信じないタイプ?うわー、俺のこと全否定されたー」

「いや、あの」

「ショック。だめだもう立ち直れん」

「最後までお聞きいただけませんか…」

修了式の日、午前中で学校が終わって、わたしたちは駅前のファミレスで向かい合って座っていた。

「飛鳥が俺を打ちのめそうとしてる…」

「いやいや、そんなこと言ったらわたしなんか自分で自分のこと否定してるようなもんだよ」

あのとき、電車の中でわたしの前に彼が立ったときから3ヶ月が過ぎた。

そのあと彼――水穂くんと一緒に隣の駅で降りて、わたしが「できればわたしもあなたの一番近しい人になりたいです」という、今思えばとんでもなくこっ恥ずかしいことを言ったので付き合うことになったわけだが、わたしの従来の考えからすればそれは軽くて敬遠される行為なのであって。

「ふーん、まぁいいや続きを述べよ」

「わぉ、上から目線ですね随分」

わたしはオレンジジュースを一口飲んだ。
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