駅のホームとインディゴブルー
「落ち着くも何も、わたしはいたって冷静だから」

芽以子はわたしの方を見ずにそう言った。

確かに声は落ち着いている。

「いやいやいや、じゃあ『気を付けな』って何!?目が怖いよ!?」

「あぁ、今飛鳥の彼氏に話しかけてるあの人」

芽以子は指すように顎を軽く前に出した。

その先には、水穂くんと向かい合っている青いTシャツの女の子。

後ろを向いているので顔は見えないけど、ハーフアップの髪にTシャツと同じ青のシュシュを結わえている。

「あの子がどうしたの?」

「すきなんだろうね、落としにかかってるよ」

「む?」

「飛鳥の彼氏を」

ふむ、そうかそうか、水穂さんモテますなぁ…。

「って、ぐぇ?」

「そんなアホみたいな声出さんでよろしい」

「すんません、つい…」

心臓がにわかにドキドキし出した。

これはつまり水穂くんが靡いてしまったらわたしは振られてしまうってことですか?

信じていないとかそういうわけではないですが心配ですよ。

やきもちも焼きますって、そりゃあ。

というか何で芽以子はそんなことわかるんですか?

「どうせ今日どこかで告白でもしなさるのでしょうよ。文化祭ってのはどうしてこう、男女ともに浮かれるのかねぇ」

そんなおばあさんみたいにしみじみ言わなくていいから!

あなた何歳なの、本当に高校生?

あたふたが伝わってしまったのか、芽以子はわたしの頭にぽん、と手を乗せて「よしよし」と言ってくれた。

「大丈夫、男なんて星の数ほどいるよ」

…あれ?
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