駅のホームとインディゴブルー
「ねぇ、よかったらアドレス交換しない?」

はた、とその2人の顔を見る。

もちろん知らない人。

制服を着崩して、髪もツンツンに立てていて、ひと言でわかりやすく形容すると、チャラい。

「あ、LINEのIDでもいいよ」

「結構です」

芽以子がにっこりと作りものの笑顔で答えた。

ちなみに目は笑ってない。

「飛鳥、ほら」

「え、うん」

そしてわたしの手を引いて、彼らの横をすり抜けようとした。

「え、あ、じゃあ、あの!ちょ、ちょっと待って!」

慌てて2人が後ろから追ってくる。

「何が『よかったら』だよ。よろしいわけないだろうが」

芽以子がわたしにしか聞こえないくらいの大きさでぼそっとつぶやいた。



結局その男子高生くん2人組に「これだけでもいいからもらっていって!」と、二つ折りにしたビラを無理矢理押し付けられてしまった。

芽以子が。

「アドレスでもIDでもなく番号を書いた意味を図りかねる」

それを開いて、裏の白地に書かれた内容をじっと見ながら芽以子は言った。

「その美貌だったらナンパしたくもなりますって」

「どうせ引っ掛けやすそうに見えたんでしょ、心外だわ」

芽以子はうんざり、といった表情でため息をついた。
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