駅のホームとインディゴブルー
「はぁ…」

ほとんどため息と変わらないような返事をして芽以子が振り返る。

「お、やっぱすげーかわいいね!連絡先交換しない?」

髪の毛は明るい茶色、耳にピアスが計3つ。

隣にいる男の人は毛先を赤く染めていて、シルバーのゴツいネックレスをしている。

わたしの中のでは疑いようもなく「チャラチャラしている」に分類される方々だ。

あれ、これはデジャヴか…?

「結構です」

「そんなこと言わずにさぁ」

「お断りします」

「えぇー、何でだよー!いいじゃんいいじゃん!」

食い下がるピアス男。

隣でずっとニコニコ、というよりニヤニヤしている赤毛。

頑張って芽以子、いい感じに笑顔が引きつってるよ!

完全に他人事のように眺めるわたし。

「あ、じゃあ番号なら」

芽以子はなぜか閃いたような表情をして言った。

え、いいの?

「うわ、やったー!」

喜んでいる男性陣。

「わたしのはこれに書いてあるのでどうぞ」

そう言って芽以子が手渡したのは先ほどの男子高生に押しつけられたビラ。

「え!それって…」

「こら、黙ってなさい」

芽以子がにやりと笑ってわたしの顔を見た。

わ、悪い顔してまっせ、お代官様!

「じゃあ俺の今から言うよ!」

「はい、どうぞ」

そうして悪のお代官様こと芽以子がチャラ男くん2名の電話番号をケータイに打ち込んでいるのを見ていると、わたしは後ろから肩をぽん、と触られた。

「な、何すか!?」

「わ、びっくりした」

驚いて勢いよく振り向いたら、水穂くんがいた。
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