駅のホームとインディゴブルー
「澤野さん、あの人ってどなたですか?」

不意に芽以子が、売り場の方を見て言った。

わたしと水穂くんも続いて同じ方を見る。

「あ」

ハーフアップ、青いシュシュ。

オーブントースターでワッフルを温めているその人は、さっき正門から見たあの女の子で、ついでに言うと前に駅のホームで水穂くんと一緒にいた子だった。

「はーい、メープルできました!」

そのちょっと鼻にかかった甘くてかわいい声にも聞き覚えがある。

「あぁ、あの背の低い女子ですか?永沼です」

「澤野さんとはどういうご関係で」

「関係?去年からのクラスメイトですけど…」

「それ以外に」

「え、何かあったかな…」

真面目な顔の芽以子、記憶を必死に巡らせている様子の水穂くん。

わたしはと言うと、2人と永沼さんとを交互に見てはそわそわしていた。

忘れていた。

「ナガヌマ」さんのことを。

芽以子に言わせると水穂くんのことがすきで、鈍感と言われるこのわたしですら、あのとき恋人だと勘違いをしたほどその空気を発していた子。

そして女のわたしがときめくくらいかわいい。

この子にすきだと言われて揺らがない男はこの世にいるのだろうか。

それに比べてわたしは…いや、悲しくなるから考えるのはやめよう。
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