駅のホームとインディゴブルー
何も知らない彼のことが気になるというのはおかしな話で。

いや、何も知らなくて、知りたいから気になるのかな。

どちらにしろ、わたしが彼に会いたいと思っているというのは確実で。

だって毎日、時間を気にしながら学校を後にしている。

同じ時刻の同じ車両に乗って同じドアから降りれば、なんて。

最初に会った次の日、そしてその次の日も、その次の日も。

――気になるとは言っても、あの数秒間以上の何を求めているわけでもない。

ただ何か、今日もいた、よかったなって思うだけだ。

それだけで満たされたような、温かい気持ちになるから。



言葉や形にできるものが全て、というわけではないと思う。

日直の仕事が押して、学校を出る時間がいつもより遅くなった。

さすがに今日は無理か。

時間にして15分、あの駅に着くのが遅くなる計算だ。

仕方ないよね。

残念に思いながら改札を通り抜けて電車に乗った。



しかし何でこんなに眠くなるのだろうか。

ゴトゴトと一定のリズムで揺れている上に足元の暖房というダブルパンチにより、わたしはうとうとしてはハッと目覚めて本の続きを読み、またうとうとして、というのを繰り返していた。

それでも、条件反射なのか何なのか、ちゃんと自分の降りる駅の直前の車内アナウンスには反応して起きるから不思議だ。

まだ少しぼんやりした意識のまま立ち上がり、ドアの前に歩みを進める。

ゆっくりと停車して扉が開いたとき、わたしは思わず「あ」と声を漏らしてしまった。

目に飛び込んできた、インディゴブルー。

ヘッドホンの紺エナメルの柔らかい彼がいた。
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