駅のホームとインディゴブルー
逃げる
そういえば彼は不思議そうな顔をして、それでいてほほえんでいたな、今思い返せば。

次の日のお昼休み、芽以子と一緒にお弁当を食べながらぼんやり思った。

昨日の一件(ただ目が合っただけなのだが)があったからといって、わたしの日常が大きく変わるわけではない。

朝起きてごはん食べて学校に来て授業受けて、帰ってからはお風呂入ってごはん食べて勉強して。

ごはんが多い?

気のせいですそれは。

で、それが彼に支配されることもないし、彼が存在するのなんて一日の中であの数秒間だけだ。

ただね。

でも。

あなたのおかげで心穏やかに過ごせていると思うのですよ。

あんな風に満たされる気持ちが、全てにいい影響を与えていると感じるんですよ。

「わたしあれかな、アイドルを追っかけてるような感じなのかな」

「あんた何言ってんの急に」

「姿見れるだけでありがとうっていうかさ」

「もう一回言うけどあんた何言ってんの」

「…冷たいっすよ」

「そんなことより早く食せ」

芽以子の方はいつの間にか食べ終わっていたらしく、「じゃ、わたし次の授業当たるから予習してくる」と言って去って行った。

わたしはさっきの自分の言葉に納得できたような、でもなんか引っかかっているような気がしてしばらく顔をしかめていた。
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