月夜の黒猫
―朔夜Side―
今日の天気は生憎の雨。
いつもは図書室か裏庭で昼寝をするが、今日は理事長室に呼ばれた。
理事長室は最上階の一番端にあり、屋上に続く階段の脇を通る。
『……(理事長室、遠い…)』
私は今階段を登っているところだ。
いつ来ても理事長室は遠い。
バシッ!
そんなことを考えていると、上の階から人を殴る声と罵声が聞こえてくる。
私は少し歩くのを速めて上の階へと足を進めた。
ちょうど登り切った時にドンッという鈍い音と短い悲鳴が聞こえ、私は屋上に繋がる階段の踊り場の方を見上げた。
『…(あ、人…、)』
上からは小さな女の子が落ちてきた。
このままじゃ女の子は受け身も取れずに大怪我をすると感じ取り、私は階段の中腹まで瞬時に移動し、女の子を受け止めてから勢いを殺すために後ろに飛んで階段の一番下に着地した。
受け止めた子の安否を確認するために顔を覗きこむと、どこかで見覚えがある子だった。
頬の怪我以外に外傷はないらしい。
それを確認すると、私は踊り場にいるケバい女達を冷めた目で見上げた。
『…ねぇ?』
女達「ビクッ!」
私が言葉を発すると女達の身体がビクッと跳ねた。
麗「な、なによぉ!」
『……イジメ。』
女2「!な、うちらイジメなんてしてないわよぉ?!証拠だってないしぃ!」
『………』
女3「そぉそぉ!いちゃもんつけないでくれるぅ?!」
女達は私のちょっと出した威圧感に怯えつつも、反論してきた。
この状況では苦しすぎる言い訳だけどね。
そこで、私はついさっき思い出したことを口に出した。
『防犯カメラ』
女達「えっ…?!」
そう、この学校にはイジメが起きるだろうと推測される場所には防犯カメラが設置されている。
まぁ、生徒はその存在をほとんどしらない。
麗「うっ、嘘よ!そんなのあるわけっ!」
『やってないなら気にするな。速くこの場から消えろ。(殺気)』
女達「ひぃ!」
バタバタバタバタ…
わたしは気絶しない程度の殺気をだしながら有無を言わせない感情が篭ってない声で命令した。
すると、女達は怯えて足をもつれさせながらも走って逃げていった。
『…大丈夫?』
私は目を見開いてびっくりしている女の子に声をかけた。
美「…あ、はいっ!……もしかして、月詠さん…ですか?」
『…?ん。』
するとなぜかその子は私の名前を知っていた。
美「やっぱり!私、この前助けていただいた神崎美優ですっ!」
どうやら私は一回この子を助けたようだ。
『………あぁ。どこかで見た気がしてた。よく私ってわかったね。』
さっきの違和感はこれだったみたい。朧気だがなんとなく覚えていた。
それにしても、この子よく私のこと覚えていたなぁー
あの時と容姿も違うのに…
美「…はいっ!声と雰囲気でなんとなく!また助けてもらっちゃいましたね…、ありがとうございます!」
それを聞くと、声と雰囲気で判断したとのことだった。
人間観察がうまいね。そんなことを私はおもった。
『…別にいいよ。とりあえず移動する。捕まってて。』
美「えっ?どこに行くんですか?!」
『…いいからおとなしくしてて。』
私は話しもほどほどに当初の予定通り理事長室に向かって歩きだした。
もちろん神崎さんを抱き抱えて。とりあえず神崎さんの言葉は全部スルーして黙々と歩いた――……
―朔夜Side終了―
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