櫻唄
「総司起きているか」

聞きなれた声が聞こえて僕は部屋をでる

「一くんがこんな時間に来るなんて珍しいね」
「たまには酒でも飲まないか?」
「話が噛み合ってないんだけど…まぁいいよ。付き合ってあげる」

そう言って縁側に座り酒を注ぐ
盃に映る月が揺れる
「総司、何か思うところがあるのか?」
一くんはすぐに人の心情に気付くんだよね。
そう思いつつ酒を煽る
「どうだろうね?そういう一くんも酒に誘うなんて珍しいじゃない?」

すると、一くんは不意に空を見上げる
「ここ最近の平穏さは嵐の前の静けさな気がしてな」
「何が起きたとしても僕らは目の前の敵を斬るだけさ 」

そう言うと彼はフッと笑い酒を煽いだ
盃に映る月はもう揺れていなかった
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