恋物語。
story.1
始まり
―2月某日。
私、坂井 知沙(さかい ちさ)26歳。只今、非常に焦っております。
今日は高校時代からの親友・朱里(あかり)から“みんなでご飯行こう”と誘われて“みんなって誰だろう?”とは思ったけれど、いつも集まるメンバーかな?と、私は漠然とそう思っていた。
なのにいざ、そのお店に朱里に連れられて行くと…
全然知らないスーツ姿の男の人が二人、そこに座っていた。
「お待たせしました~!待たせてごめんなさいっ」
朱里は両手を合わせて明るくそう言った。
「いいって、いいって。俺らも来たとこだったし」
手前に座る人がそう言う。
もう何が何だか分からない…とりあえず分かるように説明してほしい…っ!!
「ほらっ知沙!座って座って!」
「え…あっ…」
朱里に背中を押されて奥の席に座らされ、少しずり落ちた眼鏡を直す。
「では紹介します。私の親友、知沙です!」
朱里は私の方に手を添えて二人に紹介する。
「こっちが純也(じゅんや)。ちなみに私の彼氏ね?」
次に朱里から、さっき言葉を発した彼を紹介された。
「!?」
「どうも」
朱里の言葉を聞いて驚く私に声をかける純也くん。
もちろん朱里に彼氏がいるのは知っていた。だけど…会うのは今日が初めて。
朱里から聞いていた彼の情報をまとめると…同い年の同期で、すごくかっこよくてモテる。仕事の出来だって群を抜いている…らしい。
今まで聞いていた情報を思い出して彼を見てみると…確かに朱里の言う通りかもしれない。
顔は整っていて、いかにもモテそうなルックスだし…“出来る人”って雰囲気がしているから。
っていうか…隣に座っている人も、かなりモテそうなルックスをしているんですけど…。
「で、こちら…私たちの先輩、井上 聡(いのうえ さとし)さん。4つ上…でしたっけ?」
今度は私の目の前に座る彼を紹介された。
「あぁうん、そうかな。」
朱里の質問に井上さんは柔らかな表情で答える。
4つ上ってことは…30、なんだ…。
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