恋物語。
「……」
聡さん…高橋さんに何の話があったんだろう…?
やっぱり仕事関係かな。高橋さん、発注担当だし。
「あっ…!高橋さん!」
その時、備品倉庫に行こうとしていた私の目の前に休憩室から飛び出してきた高橋さんの姿が目に入ってきた。
「ぁ…坂井さん。」
「さっ……井上さんの話って何だったんですか?発注のこととか…?」
「あ、えっと……俺、目の敵にされてるから本人に聞いて。」
私に振り返った高橋さんの、よく分からない発言。
「へ…?」
“本人に聞いて”って…どういう…っ
「…坂井さん。」
「へっ…!?」
ついさっき聞いた、私の名前を呼ぶ声。
私はそれに肩が跳ね上がり後ろを振り返った。
「ぃっ……井上、さん…」
そこいた彼はニコッとした笑顔ではあるものの本当に笑ってなんかいない。
こっ…怖いんですけど…っ!私、何かした…!?
「ちょっと来てくれる?」
「っ…!」
彼はそう言うと私の返事なんて聞かずに腕を掴んできて休憩室へと連れ込まれた。
「なっ…何ですか…?」
やっぱり怖く感じる彼の顔を見ることが出来なくて俯き掴まれた腕を見つめる。
「今日…うち来て?待ってるから。」
「へっ…!?そっ…それだけ…!?」
予想していた言葉とは正反対のことを言われ慌てて顔を上げた。
「それだけって?まぁ…それだけじゃないかな。ちょっと“お仕置き”しないとだし?」
「っ…!!!おっ…お仕置きって…っ!」
「こーら。大きい声、出さない。誰か来ちゃうよ?」
ニヤッと口角を上げる彼の発言に思わず大きな声を出しそうになった時、聡さんの手が私の口を塞いだ。
「…っ」
「いい子。じゃあ、という訳だから。…よろしく。」
「っ…!」
私が黙って頷くとそれに満足したのか彼はチュッと、おでこに口づけをして休憩室から出て行ってしまった。