恋物語。
―夜。
仕事が終わった私は聡さんのお家へと向かった。
だけど既に帰っているのか分からなかったからオートロックのインターホンを押してみると彼はそれに応答したので、もう既に家に帰っているのだとその時、初めて分かった。
ピンポーン
「…いらっしゃい。どうぞ?」
部屋のインターホンを押すと開かれるドア。
そこから顔を覗かせた彼は優しい顔をしていた。
「お邪魔します…」
私はそう言って部屋の中に足を踏み入れた。
「あ…コート貸して?掛けとくから。」
「あ、はい…ありがとうございます…」
玄関でコートを脱いでいた私に聡さんがそう言う。
私は、その指示に従いコートを手渡した。
「いいえ。じゃあ先、ソファー座ってて?」
「はい。」
コートをハンガーに掛ける彼の姿を横目に、
私はリビングにあるソファーへと腰掛ける。
「……」
でも聡さん…何で急に私を呼んだんだろう…?
っていうか…私も聞きたいことがある、んだけど…。
「っ…」
思考を巡らせている間に聡さんが私の隣に座った。
「ねぇ、」
「え…っ?」
声をかけられ振り向いた瞬間、彼は私の眼鏡を奪う。
そのせいで目の前には輪郭のはっきりしない世界が広がった。
「何でさ…俺がいること、言わなかったの?」
「へ…?」
聡さんの言うことが私には全く理解できない。
“俺がいること、言わなかったの…?”って…一体、何のこと…!?
「はぁ~…ねぇ、知沙。ほんとに分からない?」
「はい…」
私の反応を見た聡さんから呆れたような声がした。
だけど、そんなことを言われても…分からないものは分からない。
「んじゃあ、はっきり言うけど…」
「っ…」
聡さんはそう言いながら私の髪を両方の耳にかけだす。
なななな、なに…!?妙にドキドキするんですけど…っっ