恋物語。
story.16
聖なる夜
―12月24日。
クリスマスイヴ。事件は…突然起こった。
それは…今から数時間前まで遡る…――。
時刻は…もうすぐ朝の10時を指そうしてた、その時―、
ブーッ…ブーッ…ブー…ッ
服のポケットに入れていた携帯のバイブ音が聞こえてきた。
「…はい。もしもし。」
『もしもし……聡さん…?』
電話をかけてきたのは…俺の彼女。
「うん。どうしたの?知沙もう会社じゃないの?」
確か彼女は10時から仕事のはず。だから、こんな時間に電話をかけてくるのは…多分おかしい。
『あの…私ね…?今日、熱を出しちゃって会社をお休みしたんです…だから…今は家です…』
あぁ…そういうことか…。
「そっか…大丈夫?」
『はい、今は何と…ゴホゴホ…ッ』
電話口から咳をする声が聞こえる。それに声だって…苦しそうだ。
「知沙…?ほんとに大丈夫?」
『ゴホゴホッ……すみません…収まりました…。で、聡さん…今日…』
「分かってるよ。それじゃあ無理だもんね。今日はゆっくり身体休めな?」
『はい……ありがとうございます…ごめんなさい…っ』
電話口からでも申し訳なさそうにしている彼女の顔が浮かんだ。
「いいって、俺のことは気にしないで?じゃあ…お大事に。」
『はい…』
そう言って電話を切った――。
―そして今、現在。
仕事を終えた俺は“ある場所”へと向かった。
ピンポーンッ
その場所とは…――。