恋物語。
―12月24日。
クリスマスイヴ。そして…聡さんのお誕生日。
なのに私は…こんな日に熱を出してしまい会社をお休み。
もちろん聡さんと会う約束もしていたから…それもキャンセル。
「はぁ…」
だから今は、部屋のベッドで大人しく横になっている。
だけど…今日は悪いことばかりじゃなかった…気がする。
それは朝…会社にお休みの連絡を入れた時――、
『…おはようございます。ax fam早川でございます。』
「っ…!」
明るい声で電話に出たのは…今はまだ少し気まずい早川さん。
「おはようございます…坂井です…」
『あら、坂井さん。どうしたの?』
電話の相手が私だと分かると、いつもの口調に戻る。
「実は今日…熱が出てしまって、お休みしようかと思いまして…」
『そうなの?大丈夫…?って、そういえば…今日、彼の誕生日じゃなかった?』
「え…!?早川さん…知ってたんですか…?」
早川さんの言う“彼”がすぐに“聡さん”のことだと分かった。
『えぇ。だって覚えようと必死にならなくても自然と思い出しちゃうでしょ。…クリスマスが誕生日だなんて。』
「まぁ…確かに…」
私も最初、クリスマスがお誕生日だなんて知って驚いた。
日付を覚えるのが苦手な私でも、これならずっと忘れないなって。
『でも気の毒ねー?こんな日に熱を出される彼女なんて。』
「……」
少し毒のある言い方に、どう返せばいいのか分からない。
『坂井さん…私、本当はあなたに謝りたいの。』
「え…?」
だけどすぐ…さっきまでの威圧感を感じるような声ではなくなっていた。
『あの時の私は、どうかしてた…。久しぶりに先輩に会って、あなたが彼女だと知って…嫉妬したのかもしれない。だから…あの時、嘘をついたこと…本当にごめんなさい…』
早川さんが謝ってくれて、これから少しずつ…関係も修復出来そうな気がしたんだ――。