恋物語。
番外編SS
新生活
―3月。
まだまだ肌寒い日が続く休日の朝。
「…聡さん、おはようございます。」
「おはよう。」
リビングにやって来た彼に笑顔で声をかける。
誕生日にプロポーズされて数週間―。
私は今…聡さんのお家に住んでいる。世間一般で言う…同棲。
それはなぜかというと…これから新居を探し、そこで一緒に住むことに慣れるため。
今まで一度も家を出たことのない私にとっては…そう言ってくれて少しホッとした。
今の同棲を始めた初日だって、かなりドキドキしてすっごく緊張したのに…
いきなり新しい所で一緒に暮らすなんて…そんなの心臓が飛び出そうだよ…。
「聡さん、朝ごはん出来ましたよ?」
ダイニングテーブルに2つのトーストを置く。
「っ…!」
すると突然…彼に後ろから抱き締められた。
「さ……聡さん…?」
「ん…?幸せだなって…知沙のいる毎日が。」
「//…」
朝からそんなことを言われ恥ずかしくなる。
「ねぇ…聞こえてる?」
「っ…き、聞こえてます…」
耳元で再び甘く囁く。
聞こえてるよ…。聞こえてるけど…どう返していいか分からないの…。
「知沙……愛してる。」
「っっ…」
聡さんはそう言って…私のほっぺにキスを落とした。
「あのっ…聡さん…」
「んん…?」
「トースト…冷めちゃいます…」
私は恥ずかしさを隠すように話を逸らす。
「あ、そっか。ごめんごめん。食べようか。」
聡さんはそう言うと私を開放した――。