恋物語。
―それからしばらくして。
ん…?
井上さんは歩くのを止めて立ち止まった。
「どうしたん……っ!!!」
“どうしたんですか?”そう言いながら顔を上げていき私は驚愕。
えぇ…っ!?ちょ、ちょっと待って…!?ここ…ここって、まさか…っっ
私の目に飛び込んできたのは“HOTEL”の文字。
噂によく聞くような分かりやすーい外観ではないけれど…でも多分…これはそうだと思う…。
「…知沙」
「え!は、はい…っ」
初めて呼び捨てで名前を呼ばれたことに驚きながら返事をすると井上さんは私の顔を覗き込んだ。
「嫌がることは絶対にしないから…入ってもらってもいいかな。」
「っ……はい…」
井上さんの言葉を信じて…私は小さく頷いた。
―――――――…
――――――――…
ドキドキドキドキ…
ど、どうしよう…こんなとこ初めて来ちゃったよ…っ
で、でも…井上さんは“嫌がることは絶対にしない”って言ってくれたし…。
「どうしたの…?座りなよ」
部屋に入り立ったままでいる私に、ベッドに座る井上さんが話しかける。
「あ…はい…」
とりあえず返事をして井上さんの隣に腰掛けた。
「あ…これ取っていい?」
「え…?何を?」
いきなりそんなことを言われて何のことだかさっぱり分からない。
「…眼鏡」
「え…!?何でですか…?」
眼鏡を取りたいって、どういうこと…?
それが何かが分かっても…私には事の真意が分からない。
「素顔のキミが見たいなぁ…って思って。ダメ…?」
「///…」
グッと顔を近づけて…強い瞳を宿して私を見つめる。