恋物語。
story.5
モデル
―3月下旬、月曜日の朝。
INT Inter本社へとやって来た。自社ビルであるこの会社は5階まである大きな会社。
私がここに来たのは初めてではない。実は就職活動でこの社も受けていたりしていた。結果は…まぁご覧の通りダメだったんだけど。
でももし私が受かっていたら…朱里やその彼、そして…井上さん、と一緒に仕事をしていたのかもしれない…。とか思うだけでドキマギしてしまう。
いつ見ても大きな会社だなぁ…。
目の前のビルを見上げてそう思う。そして、私は電話をかけた。
社に着いたら電話をするよう、井上さんから言われていたから。
プルプル…ッ
『…はい、もしも し』
ドキ…ッ
「あっ……おはようございます、知沙です。今、着きました」
電話で話すのは初めてじゃないのに…何だか緊張する。
『おはよう。じゃあ…今から下まで迎えに行くから、ちょっと待ってて?』
「はい…」
電話を切って彼の到着を待つ。
な…何だろう…?いつも会う時より緊張した…。てか電話口の声…あんなによかったっけ…?
うぅ~…今から来るっていうのに、さらに緊張しちゃいそうだよ…っ
両手で頬を包み思い悩んでいた、その時―。
「……知沙。」
後ろから聞き覚えある声でそう呼ばれた。
「ぁっ…おはようございます、ぃ……聡さん…」
「ふふ。今一瞬、悩んだでしょ?」
慌てて振り返ると彼は柔らかく笑ってそう言う。
「え…?」
「名前。」
「え!?あ、はい…」
だって会社の前なんだもん…。だけど聡さんは名前で呼んできたし…っ
「まぁいいよ。そんな知沙も可愛くて好きだから。」
「///…」
朝から甘すぎる、この言葉。
「あ…」
「え…?」
何かに気づいたらしい顔をする彼を見つめる。