恋物語。
『あ、そだ。井上さんなんてどう?』
いきなりそう言い出したのは純也。
『え…?』
急に話を振られて俺は戸惑う。
『あ!それいいかもー!井上さん。井上さんが良ければっで全然いいんですけど…この子と会ってもらうことって出来ますか…?』
『んー……いいよ。』
『え!ほんとですかっ!?』
懇願するような彼女の問いかけにそう答えると彼女がものすごく喜んでいたことを…今でも昨日のことのように覚えている…―。
あの時は、ただただ…
“可愛い女の子”って印象しかなかったけれど実際に会って喋ってみたら…
ものすごく人見知りだし、シャイみたいだけど…
でも、その控えめな所にどんどん惹かれていったっていうか…
今まで俺の周りにいた女の子っていうのが明らかに俺を狙っている感じの強い子ばかりで、
こういう、大人しくて控えめな子には出会って来なかったっていうのも事実なわけで――。
だから…―、
「ちゅ…っ」
できることなら…俺が彼女を守っていきたいと強くそう思ったんだ――。
「……んん~…さとし、さん…?」
おでこにキスしてしまったせいか、彼女は目をこすって寝ぼけ眼で俺を見た。
「ごめん…起こしちゃった…?」
「んん~…うん…」
「ごめんね…?まだ寝てていいよ…?おやすみ」
俺は促すように彼女の髪を撫でた。
「うん……」
彼女は返事をすると再び目を閉じ寝息をたて始めた。
彼女の真意は…本当に分からない。それを聞こうとも…別に思わない。
ただ…彼女が俺に堕ちるまで…そう時間はかからないのかもしれない――。
~【another side】END~