恋物語。
「ほら早く。……キスしますよ?」
「えぇ…っ!?!?」
と思ったら次は…クールな表情に変わる。
な…何なの、この人…。ギャップがありすぎる…。って、っていうか…っっ
「しっ……慎一、くん…っ」
徐々に近づいてくる彼の名前を呼んだ。
「…はい。よくできました。」
彼…慎一くんはフワッと笑ってそう言うと私の頭を撫でて元に戻った。
「っ…」
な、何だろう…?聡さんより大変かもしれない…。
「…あ。っていうか徳井さん、いつから撮ってたんすか?」
え…?
彼がカメラマンに向かって言っていたから私も正面を向く。
「え…?今のやり取り全部。」
「っ…!!」
う、嘘…っ!?今のこれ…全部写真に撮ってたのー…!?
「お陰でいいのが撮れてると思うよ?」
「なーんかそれ照れますってばー。ねぇ、知沙さん?」
「え…?あ、うん…」
「じゃあ、その調子でお願いしまーす」
「はーい」
「……。」
こんな人が本当に彼氏だったら…毎日振り回されそう…。
「ねぇ知沙さーん。俺って…誰かに似てると思いません?」
「え…?」
慎一くんはそう言うと私に振り返る。
誰かにって……あ!
「MATのMASUくん!?」
MAT(マット)とは…今、大人気の男性アイドルグループ。
グループ名は…メンバーのMASU(ます)、AOI(あおい)、TETSU(てつ)の3人の頭文字から。
TETSUくんは男気が溢れるかっこいい人で、AOIくんは何事もそつなくこなすオールマイティイケメン。
そして慎一くんに似ているMASUくんは…とにかく可愛い。女の子が負けちゃうんじゃないかってぐらい。