恋物語。
「ふぅ…」
待ち合わせ場所の駅前へと、ゆっくり向かっていく。
今日は聡さんの身長に見合うように…7センチものヒールのパンプスを履いてきたから気をつけて歩いていると歩幅は自然と狭くなり、ゆっくりになってしまう。
久しぶりすぎて…すっごい緊張する…。私…ちゃんと話せるかな…。
私は…“ある決断”を心に決めていた。それを彼に上手く伝えられるか不安ではあるけれど…。
「あ…」
駅前に到着して、すぐにスーツに身を包む彼の姿を見つけた。
「さ…っ……!?」
“聡さん”そう言おうとした時…知らない女の人と何かを話しているのを目撃してしまった。
しかも、その女の人は…聡さんに見合うぐらい背が高くて、すっごく綺麗で…私なんかが到底敵う人なんかじゃなかった。
「っ…」
そんな光景を目撃してしまった私は、そこから動けなくなってしまう。
っていうか…身体が動いてくれない。
何で…?何で今なの…?
そのまま動けず、ボーッと二人の様子を眺めていた、その時―…、
「っっ…!!」
その女の人が彼のネクタイを引っ張って…彼女の顔に覆いかぶさった…―。
ダ…ッ
瞬間、私は二人のいた場所とは反対方向へと全力で走り出した。
あんなに動かそうとしたのに動かなった身体が…咄嗟の時には、あっという間に動くなんて…。
なんて皮肉なんだと思った…。じゃあ初めから思った通りに動いてよ…っっ!!
だったら…もしそうだったら…っ
「グス…ッ」
あんな“場面”なんて見なくて済んだかもしれないのに―…。
「……」
もう…“手遅れ”になっちゃったじゃん…。やっぱり…私のことなんて…っっ
私は…もう無我夢中で全然気づいてなんかいなかった。
ガシ…ッ
「っ…!」
「……待てってば…知沙…」
“彼”が追いかけて来ていたことなんて―…。