恋物語。
「でも何で…?何で私が、あそこにいたって…」
「何か物音が聞こえた気がしたんだ。
そしたら…勢いよく走っていく女の子の姿が見えて…それがすぐ知沙だって気づいた。だから…ここまで追いかけて来たんだ。」
「……」
「だけど…捕まえてビックリしたよ。
知沙…こんなに高いヒールの靴履いてるんだもん。
よく、あんなに早く走れたね?足、大丈夫?」
彼は私を離し…視線が絡む。目の前に映る顔は…心配そうな顔をしていた。
「……ちょっと…痛い、かも…」
「え!?ちょっと待って…とりあえず、そこ座って。」
彼は私にガードレールに座るよう促し、私はそれに従う。
すると彼は私の靴を脱がせた。
「っ…」
「うわ…血、出てるじゃんか。」
その言葉通り靴が擦れてしまった場所から血が滲んでいた。
「早く手当しないと…でも、ここからだったら俺ん家の方が近いし…俺ん家でもいい?」
「……はい…」
「じゃあ、ちょっと待って…」
返事をすると彼はもう一度、私に靴を履かせ私の荷物を肩にかけだした。
「……?」
聡さん…?なに…してるの…?
「…はい、乗って?」
「っ!」
すると彼は…私の前に背を向けて、しゃがみこんだ。
こ、これって…まさかの“おんぶ”…!?
「い、いいですよ…っ!!私、自力で歩けますから…っっ」
街中で“おんぶ”されるなんて…そんなの恥ずかしすぎるってば…っっ
「この期に及んで何言ってんの?ダメに決まってるだろ?
そんな状態で俺ん家まで歩いたら…もっと悪化するかもしれない。
だからほらっ…駄々こねないで乗る!」
「……はい…。」
強い口調で言う聡さんには勝てず…私は渋々、彼の背中に乗った。
そして彼は立ち上がる。