恋物語。




「でも何で…?何で私が、あそこにいたって…」



「何か物音が聞こえた気がしたんだ。

そしたら…勢いよく走っていく女の子の姿が見えて…それがすぐ知沙だって気づいた。だから…ここまで追いかけて来たんだ。」



「……」



「だけど…捕まえてビックリしたよ。

知沙…こんなに高いヒールの靴履いてるんだもん。
よく、あんなに早く走れたね?足、大丈夫?」


彼は私を離し…視線が絡む。目の前に映る顔は…心配そうな顔をしていた。



「……ちょっと…痛い、かも…」



「え!?ちょっと待って…とりあえず、そこ座って。」


彼は私にガードレールに座るよう促し、私はそれに従う。
すると彼は私の靴を脱がせた。



「っ…」



「うわ…血、出てるじゃんか。」


その言葉通り靴が擦れてしまった場所から血が滲んでいた。



「早く手当しないと…でも、ここからだったら俺ん家の方が近いし…俺ん家でもいい?」



「……はい…」



「じゃあ、ちょっと待って…」


返事をすると彼はもう一度、私に靴を履かせ私の荷物を肩にかけだした。



「……?」




聡さん…?なに…してるの…?




「…はい、乗って?」



「っ!」


すると彼は…私の前に背を向けて、しゃがみこんだ。




こ、これって…まさかの“おんぶ”…!?




「い、いいですよ…っ!!私、自力で歩けますから…っっ」




街中で“おんぶ”されるなんて…そんなの恥ずかしすぎるってば…っっ




「この期に及んで何言ってんの?ダメに決まってるだろ?

そんな状態で俺ん家まで歩いたら…もっと悪化するかもしれない。
だからほらっ…駄々こねないで乗る!」



「……はい…。」


強い口調で言う聡さんには勝てず…私は渋々、彼の背中に乗った。
そして彼は立ち上がる。





< 61 / 148 >

この作品をシェア

pagetop