恋物語。
「知沙…やっぱり軽いね。痩せた?」
そう言いながら彼は歩き出す。
「そんなこと…ないです…」
「ふーん…」
「……」
そのあと、しばらくの沈黙。何を話したらいいのか分からない最中…
「ねぇ、知沙…」
その沈黙を破ったのは聡さんだった―。
「なん…ですか…?」
「今日の“それ”って…俺のためなんじゃないの?」
「え…?“それ”って…?」
ただ単に“それ”と言われても…何のことだか、さっぱり分からない。
「……靴。普段そんなにヒールのあるやつなんて履かないだろ?」
「っ…」
やっぱり聡さんは…私だけの“超能力者”だ…。
「俺の身長に合わせてくれたのかな?って…すぐに分かった。目線の高さが明らかに違ったから。」
「何で…いつも分かっちゃうんですか…?」
「それは……知沙が好きだから。
忙しくって会えなかった時も…四六時中、知沙のこと考えてた。
それぐらい俺は…知沙が好きなんだよ…?ちゃんと分かってる?」
「……はい…」
そんなの…もう充分すぎるぐらい…。
聡さんはいつも…私に“愛情”を注いでくれる。それは…嘘や誤魔化しじゃなくて…本当の。
そんな“愛情”を…私は彼に返せるのだろうか…?そう何回も考えた。
“好き”の気持ちを子供の頃に置いてきた私にとって…
これは、すぐに答えられるほど簡単なものではなかったから。
だけど私の“中”では…気づかない内に、それは少しずつ“育って”いて…
もう…“後戻り”出来ないぐらい…それは“大きく”なってしまったんだ――。