恋物語。
「じゃあ話す。あの子は…―」
――――…。
あの駅前で知沙を待っていた時…“あの子”が突然現れた。
この子は…知沙の友達である子の後輩で今年入社2年目の子だ。
『どうしたの…?奇遇だね。』
『奇遇なんかじゃありません。私…井上さんをつけて来たんですから。』
『え…?どういうこと…?』
彼女の発言に俺は驚く。
『何か井上さん…最近変わりましたよね?前より丸くなったっていうか…』
『…そうかな?』
自分では、そう思わないけどな…。
『はい。女の子には分かっちゃうんです!……大切な人が出来たんじゃないかって。』
『え…?』
バレてたってこと…?いや…別にバレてマズイことは何もないけどさ。
『驚くってことは図星なんですね…?誰ですか?社内の人?いや…違う会社の人…?』
彼女は強い瞳を宿し俺に詰め寄ってくる。
『…キミに答える必要はないと思うけど?』
『は…!?何ですか?それ…。
私は…入社してからずっと井上さんを見てきたんです。それなのに…っ!
正体すら分からない誰かに…私の大切な井上さんを奪われた…。
こんな私の気持ちが…あなたに分かるっていうんですか…!?』
彼女は眉間に皺をよせ下唇を噛み…悔しそうな表情を浮かべた。
『そう言われちゃ…俺にはキミの気持ちは分からないけど…でも…っ…!!』
“キミの気持ちには応えられない”そう言おうとした時…
彼女は急に俺のネクタイを掴み、それを強く自分の方へ引っ張った。
『……おっと。なかなか手荒なことをするね…?でも俺は…そんな罠になんて引っかからないから。』
唇が触れる寸前…俺は彼女の肩を強く掴み、その行動を止めさせた――…。
「そう、だったんですね…」
聡さんから事の真相を全て聞いた。
あの人も…聡さんが好きだったんだ…。だから、あんなこと…。でも…っ
「……聡さん…お願いがあります…」
私は隣に座る彼に抱きついた。
「何…?」
「今日…お家に泊めて下さい…」
「俺は別に構わないけど…いいの?」
「はい…。お母さんには…今から連絡しますから…」
――――…
――――――…