恋物語。
―――――…
―――――――…
「…ありがとうございます。」
―夜になり、私は家まで送ってもらった。
この前の“朝帰り”の時は家の前まで来てもらったけれど…私の家はエントランスがオートロックのマンション。だから今日は、そのオートロックの近くまで。
「いいって、別に。…あ、そうだ。知沙…手、出して?」
「手…?こう…?」
聡さんに言われるまま、右手を広げた。
「……はい、これ。俺ん家の鍵。」
「え…!?」
すると…聡さんは私の手のひらに鍵を置く。
これって…これって、まさか…っっ
「“合鍵…?”」
「そう、合鍵。知沙の物も、うちに持ってきなよ。スペース取っておくから。」
言いながら見上げると、彼は優しい顔で微笑んだ。
「…はい。」
返事をし、右手をギュッと握り目を伏せた。
合鍵とか…合鍵って…合鍵なんて…っっ
私が持つ日が来るなんて本当に思わなかった…。
何だろう…?もう…夢みたいだ…。
「……聡さん…」
何だか無性に抱きつきたくなって彼に抱きついた。
「何?どうしたの?甘えん坊だなぁ…知沙は。」
優しい声のする聡さんは…私の頭を撫でる。
ドキドキドキドキ…
「聡さん…ちょっと屈んで…?」
「こう…?」
彼から少し離れた私がそう言うと、それに従ってくれた。
そんな彼の両肩に両手を置き、めいいっぱい背伸びをして…
「ちゅ…っ」
短いリップ音を彼につけた――。
「……惜しいなぁ…何でそこ?」
「だって聡さん…“口に”なんて言ってないじゃないですか…」
―そう。
私が聡さんにキスした場所は…彼の“ほっぺ”
あのインテリアショップで耳打ちされたこと、それは…“キスして?”だった。
だけど自分からキスなんてしたことのない私は…かなりの葛藤をした。
そして見つけた“解決策”が…“これ”だったというわけで…―。
「まぁ…そういえばそうか…」
聡さんは“やられたなぁ…”みたいな顔をする。
「なら今度は……ちゃんと“指定”するから。」
彼はニヤッと笑ってそう言った――。