恋物語。
story.11
危機
―9月。
今日は朱里と会っている。ちなみに今は…カフェでお茶中。
「知沙さー…井上さんと“正式に”付き合うようになってから変わったよね」
「え…?そう…?」
真向かいに座る朱里にそう言われた。
だけど…私には全く検討もつかない。
「うん。……前よりも可愛くなった。」
「っっ…!!」
朱里の発言に飲んでいたミルクティーを口から吹き出しそうになった。
「ちょっと汚い!大丈夫~?」
「え、うん…ごめん、大丈夫…」
私は紙ナプキンで口周りを拭う。
っていうか…っ!!元はといえば、朱里が変なこと言うからでしょ…っ!?
「…だって、ほんとだもん。」
「え…」
待って待って…っっ
「…相変わらず顔に出すぎだから、知沙は。」
「……。」
うぅ…。もっと心に隠せる人になりたいよぉ…。
「…で、話戻すけどさー…ほんとに可愛くなったよ?知沙」
「そ…そんなことないよ…」
だって私は…前との“違い”を感じないんだもの…。
だから、もしそう言うのなら…だたの“錯覚…―。”
「そんなことあるからっ!
知沙は自分のこと、どう思ってるのか知らないけど…井上さんのために“もっと可愛くなりたい”とか“綺麗になりたい”って思ってるんでしょ!?」
「それは…まぁ…思ってる、けど…」
そのために、いろいろ試そうとだってしている…。だって…っ
「それだけで女の子は可愛くなれるの!“好きな人のために頑張ろう”って思えることが…一番可愛いの。」
「……」
そういうものなの…?
今までまともな“恋”なんてしたことがないから…そこの所はよく分からない…。
「でも私、安心したよ~。知沙もやっと“大人の階段”登ったのかぁ~…って。」
「お…っ!!」
朱里の発言に目を丸くした。
“大人の階段…!?”って…っっ!?
「え?この期に及んで、とぼける気…?私を“ダシ”にまで使ってやったくせに…?」
「っ…」
朱里は取り調べをする刑事のようなキツい目で私を見る。