恋物語。
―聡さんと距離を置き出して…もう数週間。
私は…いつもと変わらない毎日をすごしていた。
っていうのか…“すごそう”と努力していた。
だって…何をしていたって…
悲しくなるぐらい“彼”のことを思い出してしまうんだもん…―。
「はぁ…。」
やっぱり無理…。会いたいよ…声、聞きたいよ…。
でも…自分からあんなことを言っておいて…今さら、どうしたらいいの…?
そんな時―、
♪~♪~
部屋中に携帯の着信音が響き渡った。
「だれ…?え…朱里…?」
その携帯に手を伸ばして着信相手を確認。そのまま電話に出た。
「…もしもし。」
『もしもし、知沙~?元気してる~?』
電話口から聞こえてくるのは朱里の明るい声。
「うん、元気だけど…でも、どうしたの?」
朱里とはメールのやり取りは頻繁にするけれど…
直接、電話がかかってくるのは本当に珍しいこと。
『ん…?井上さんとは順調かなぁ~…?って思って。』
「っ…!」
人から聞く“その名前”に心臓がドキリとした。
『てか私、聞いたよ~?“知沙が元気ないみたい”だって。…どうしたの?何かあったの?』
「……。」
聡さん…。朱里にまで…私の様子を聞いてくれていたなんて…。
「うぅ~……あかり~…っ」
『え!?何なに!?何があった?私でよければ聞くから。ね?』
今まで堪えていた堤防が決壊する瞬間だった。私の涙は止まることを知らずに溢れ続ける。
そんな私を理由も知らない朱里は戸惑っていたけれど…私を宥めるように、そう言ってくれた。
そして……事の事情を全て話した――。