恋物語。
『……知沙…それは井上さんの話も聞かないと。』
「え…」
全てを話し終えた時に朱里からそう言われた。
『だってそうじゃない?
知沙の先輩がどういう人なのかは知らないけどさ…井上さん、すごく心配そうな顔してたもん。
それってつまり…その人より知沙の方が好きってことでしょ?じゃないと…あんな顔、しないよ。』
「……」
聡さんは…どんな顔を朱里に見せたの…?
朱里がそんなに言うほど…私を心配してくれるの…?
『知沙~…?聞いてる?』
「あ、うん…ごめん、聞いてる…」
『だから…この電話が終わったら、すぐ井上さんに電話すること!分かった!?』
「え…!?」
朱里の強い口調に驚きを隠せない。
『え、じゃない!絶対するんだよ?知沙は…井上さんが好きなんでしょ?』
「……うん…」
『だったら大丈夫。それに…知沙からしないでどうするの!?
散々電話もメールも無視してたのは、どこの誰よ?』
「ぅ……私、です…」
朱里に痛い所を突かれた。
あの夜のあと…聡さんから何回も電話やメールがあったけれど…
私はそれの全てを無視し続けていた―。
『でしょ!?なら知沙からしないと絶対ダメだからね?分かった!?』
「……はい…」
そう説教めいたことを言う朱里の言葉を聞いていたら…いつの間にか涙も引っ込んでいた。
『あ…私、井上さんに確認取るからね!?油断するんじゃないよ!?』
「……うん…分かった…―。」