記憶の欠片
1日目、理系グループの夜。
よるご飯も食べ終わって、
みんながダラダラし始めた頃。
友也は1人、外の火の当たるベンチに
座っていた
「あっちゃんの事、思い出してる?」
すると長いベンチの隅に座っていた
俺の片方の隅に日向が、
少し距離を開けて座った。
「えっ?」
「だって携帯取られてるし、
話出来ないでしょ?」
携帯は、
合宿の初めに全員回収された。
「まぁね」
お互い、何故かなにを話していいのか
わからず沈黙が続く
「…あっちゃん…好き?」
「ん?なんで?」
「いや、他の彼氏が彼女に
する目とちょっと違うから」
まあ、確かにまだあっちゃんを
好きかわからない
だって今だにあいつが
心を支配してるから。
だけど、ふたつだけ
わかってる事がある。
「俺さ、忘れられない人がいるんだ。
でももう一生会えない事はわかってる。
その子がまだ心にいるから、あっちゃんを好きかどうかはまだわからない」
「それでも、わかる事が2つあるんだ。
それは、あっちゃんが俺を好きでいてくれる事と、着実に少しずつ好きに近づいてるって事なんだ」
ハハッて照れ笑いしながら日向の
ほうを向けば、
日向の掌にポタポタと涙が零れていた
「…えっ?日向どうした?」
「…ッ…ごめん…ごめんね」
何度も『ごめん』と謝る日向に、
どうしてやる事も出来ない
ただ黙って、背中をさすってれ
だけだった。