記憶の欠片


もう1泊する事が決まり、
しばらく自由時間になったから

近くの海に行く事にした。

目を閉じ空を見上げれば、

今日は星がとても綺麗で
見惚れてしまうほどのもの。


瞼の裏に思い描くのは
あっちゃんの笑顔。

思わず微笑んでしまうが、
その微笑みは
消え去ってしまった。

だってあっちゃんの笑顔が消え、
その後に昨日の涙する日向が
浮かんだから。

どうして思い浮かんだのかわからい。

ずっと考えてたら、俺の座ってた横に
あっちゃんが座った。

「な〜にしてんの?」

「ん?あっちゃんか。どうした?」

「ううん。ただ翔が智と話したいって
言ってたから、
ちょっと気をきかせたんだ」

「そっか」

なんてあっちゃんは
俺の肩に頭を寄せ、
手を握る。

「…星綺麗ー」

「だな」

「都会じゃ絶対観られない空だよね〜」

「俺はよく地元で見てたよ?」

「いいな〜、私の家全然見れないや」

「こっちは田舎だからね」

「私も行ってみたいな〜。
ね、今度連れて行ってよ?」

「また今度な」

なんて会話の最中も、
俺の頭の中には昨日の日向の顔が
離れない。

泣いていた意味がわからないんだ。

暫くあっちゃんと
いろんな話をしてたら、

翔が青ざめた顔色をして
走ってくる。

「翔?どうした?」

「…日向が…日向がいなくなった」

その言葉を聞いた途端に
俺と絡めていた腕を、

離して立ち上がる。

「…いきなり日向が過呼吸起こして、
それで…」

「…どこ」

「…えっ?」

「…どこ…智はどこ⁉︎」

あっちゃんは翔みたいに
青ざめた顔で、取り乱してた。

何故こんなことになったのかは
わからない。

だけど…だけど早く探さないと、

一刻を争う事態になるかもしれない。

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