記憶の欠片


島へは少し距離があるものの、
走れば全然短い距離。

だけど、一つ問題点がある。

それは今、冬だということ。

冬で風が冷たいし、道が無いせいで
濡れてるから余計に寒い。

それにさっきから雨が降ってきて、
もう最悪に寒い。

だけどそんなこと言ってる暇はない。

もう時間がないんだ。

「…日向ー!日向ー!」

何度名前を叫んでも、
その声は雨に掻き消される。

…くそっ。

…ここにも、いないのか?

諦め掛けたその時、
何処からか小さな声が聞こえた

「…と…もや…くん」

「…日向?…どこだ日向⁉︎」

その声元を辿れば、
そこには日向が座り込んでいた

「日向!大丈夫か⁈」

「…大丈夫。だけど…ちょっとだけ過呼吸が…」

日向は少し辛そうに呼吸をしていた

「今先生呼ぶから!」

先生に電話をしたら、
直ぐに船を向かわせるって言ってた

まぁまだ時間はかかるかな。

「直ぐ来るって。過呼吸、大丈夫?」

「…うん」

ふと日向の足元を見ると、
転けてしまったのか日向の足から
血が出てる。

「…転けたのか?」

「…ちょっとね」

「…どうして翔から逃げたんだよ?」

雨が凌げる場所に移動し
日向と距離を置いて座る

「…翔君に告白されて…OKしたの。
…そしたら翔君がキスしてきそう
だったから…だから…」

「じゃあどうして
告白OKしたんだよ?」

「…告白されたのは昨日なの
昨日の友也君と話す前付き合ってって
言われて、本当は付き合う気なんで
なかったけど、友也君の話聞いてから…」

涙ながらに話す日向。

その姿にまだしたかった、
ずっと気になってた事を
日向に問い詰める事なんて
出来なかった。
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