記憶の欠片
翔が部屋から出ていった後
あっちゃんが扉の側から
ひょこっと顔だけ現れる。
「…ともちん?今大丈夫?」
「…あぁ、大丈夫だよ。おいで?」
座っていた俺のベッドを
ポンポンと叩いて招く。
「日向、怪我大丈夫だった?」
「…うん。でもおでこのとこも
ちょっとだけ切れてた」
足からの出血が酷かったからかな?
おでこのほうの傷なんて
見てなかった。
「…そっか」
「…ねぇともちん。身体冷たいよ?」
「ほんと?」
さっきまで雨に濡れたり
冬風の冷たい風に吹かれてたり
したからか
身体がやけに冷たい。
でもそれはあっちゃんが抱きついて
くれてるからか
温もってきてる。
「今はあったかい?」
「うん、あったかいよ。
…そういえば日向も
風邪ひいてなかった?」
「…わかんない。…なんで?」
「いや、日向も雨に濡れてたからさ」
「…そっか」