記憶の欠片


手伝い最終日。

昨日の事もあってか
奈々ちゃんとは少し気まずい。

でも今日で終わりだし。

奈「…あっ」

教室で待ってたら
奈々ちゃんが来た。

奈々ちゃんは、

約束ちゃんと守るんだ

って言って目の前の椅子に座る。

「…昨日はごめんね。
歳の離れた兄弟の事を聞いちゃうと、
つい思いだしちゃうの。
一生他の人に話すつもりなんて、
なかったのに…」

奈々ちゃんはまた昨日みたいに

悲しそうに笑う。

「さ、さっさと片しちゃお!」

「そうだな」

奈々ちゃんの話に何も言えなかったけど

とりあえず今日で手伝いは終わりだし

早く片付けようと思い、

また俺はプリントで奈々ちゃんは

出席簿に手を付ける。

「…あっ。また日向さん体育休んでる」

「…そっか」

「…智美…かぁ」

「どうしたの?」

空を仰ぎながら言うから、

ちょっと心配になる。

「…苗字は忘れたけど…
『智美』って、あの赤ちゃんと
同じ名前なんだ〜」

…偶然、だよな?

俺の探してたやつも智美。

どうしてだよ。

どうしてまた、こんなにも
気になる事が増えるんだよ?

俺はこの時、
誰かがこの会話を

ドアの側で聞いていた事を
知りもしなかった。
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