記憶の欠片


そして、再来週末。

今日は先週の週末に買った、

日向へのプレゼントを渡す日。

「智、ちょっといい?」

「…なに?」

「ちょっときて」

あっちゃんは日向を部屋の前
まで連れて行きドアを開ける

そこには、前みたいに生活感の無い
部屋じゃなくて

カラフルに彩られた家具などが
あり、

日向は目を丸くしてた。

「この前ともちんと話して決めたの。
智に、何かプレゼントしようって。
…気に入ってくれた?」

「…もちろん。ありがとう」

あっちゃんは日向の

言葉を聞いて

嬉しそうな顔をして日向に

抱きついた。

「じゃあ智の新しい部屋で
おやつ食べよ?
私、お茶持ってくるね」

今にもスキップをするかのように

あっちゃんは階段を駆け下りる。

部屋には俺と日向の2人だけが

取り残され、

シンとした雰囲気になる。

「…友也くん…これ…」

日向は部屋のタンスから何かを
取り出し俺に手渡す。

「…これ」

それは以前の合宿で

雨に濡れていた日向に

かけてあげたジャージのうえ。

洗濯して綺麗に畳まれている。

「ありがとう」

「…こちらこそ」

「…なぁ日向。
どうして日向はベッドにしか
いないの?
どうやった部屋に背を向けるの?」

「…ベッドにしかいないのも、
部屋に背を向けるのも
同じ理由だよ」

「…怖いの。
こんな広い部屋に住ませてもらって
嬉しいんだけど、
夜になって1人になると
あの時の記憶が脳裏に浮かぶの。
よく眠れないし夢にでてくる」

「…こんな思い、あなたは
感じたことないでしょ?」

「…そうだね」

そう話す日向は

いくつもの重い鎧を背負っている
ように見えて

あの日起こったその出来事は

日向に消せない記憶と悲しみを生み

日向の中に張り付いてるんだ。

俺は涙を流す日向の背中を

ゆっくりさすっていた

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