記憶の欠片

姉と妹



その後あっちゃんと話し合った結果、

2人に姉妹だということを
知らせることにした。

日時は今日のお昼。

週末だから奈々ちゃんを
あっちゃんの家に招待して
俺も付き添うことになってる。

「奈々ちゃんまだかな〜?」

「もう来るんじゃない?」

そわそわするあっちゃんに
日向が不思議そうにしてた。

「…どうしたの?」

「…ううん、なんでもない」

ピンポーン

「あっ!きたきた!」

チャイムが鳴り
3人でドアを開けに行くと
奈々ちゃんが笑顔で待っていた。

「で?今日はどうしたの?」

敦「あのさ、奈々ちゃんの
引き出しに入ってた写真って…」

「…あぁ、これ?」

奈々ちゃんは手帳の中に入っていた
写真を取り出し見せてくれる。

写真は半分だけしかなくて

小さな子供がひとり映っている。

「…これ私。前に妹の話したでしょ?
まだ妹と一緒にいられた時に
父に撮ってもらったの」

敦「…どうして半分?」

「母親に破られたの。
離れる前に妹の服にこの半分を
入れておいたの。
いつか会えるんじゃないかって思って」

「…智。智の写真貸して?」

「…うん」

日向も同じように
引き出しから写真を出して
みんなの前に差し出す。

「…奈々ちゃんもみて?」

「…これって……」

日向の写真にも、
奈々ちゃんと同じように
ひとりの赤ちゃんが写っていた。

その写真の破れた部分を
重ね合わせてみると、
綺麗に重なりあっていた。

「…2人共、わかる?
2人は…姉妹なの。
この写真が証明してるでしょ?」

奈々ちゃんの頬に涙が伝う。

「…本当に妹なの?」

敦「…うん。
智、お姉ちゃんだよ?」

「…お姉…ちゃん?
…嫌……いやだ!…助けて!…」

日向は大きな声で泣き叫んだ。

今まで聞いたことのないくらい、

大きな声で。

そしてその後過呼吸を起こした。

奈々ちゃんはあの事を知らないから
呆然としている。

過呼吸が治まってベッドで
眠った後も
どこか活きがない感じで。

敦「…きっと小さい頃の記憶を
思い出したんだと思う。
…奈々ちゃんには言って
なかったけど…」

あっちゃんは俺に話してくれた事を
奈々ちゃんにも話した。

記憶喪失のことや

パニック障害
人間不信
精神安定剤

全てのことを。

そしたら奈々ちゃんも
泣いていて
びっくりしてる。

「…今の話聞いてどう思った?」

「…私は……ちょっと考えさせて
もらってもいいかな?」

敦「もちろん。
いきなり言われても困るよね」

「…じゃあ私、帰るね」

きっと奈々ちゃんも困るよな。

いきなり自分の生徒が
自分の妹だ、なんて
言われても。

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