記憶の欠片
とある日の夜。
翔を呼び出して
あっちゃんと2人で来るのを
待っていた。
なにも言わずにただ2人で
立ち尽くすだけ。
それはまるで
結婚相手を両親に
会わせるみたいな、
そんな感じ。
「お待たせー!」
「おう、悪いないきなり」
「んで、話ってなに?」
あっちゃんと顔を見合わせて頷く。
「…日向のことなんだ」
『日向』。
その言葉を口にした途端、
翔の表情は曇っていく。
やっぱり、翔は何かを
知っているんだ。
俺とあっちゃんは
日向のことについて
全て話した。
虐待の事とか精神状態の事。
もしかしたら俺の忘れられない人が
日向なのかもしれないことや、
奈々ちゃんと日向の関係も。
「…なんで…今まで黙ってた」
翔の顔を見ると、
激怒ってほどじゃないけど
完全に怒ってた。
「…なんでそのこと今まで
俺に黙ってたんだよ⁉︎」
「…なんでって日向に
止められたんだよ!
そのくらい彼氏だったら
分かれよ!」
「…ウワァー!」
翔は俺を殴った。
それも泣きながら。
「…ちょっと2人共やめて!」
気づいたら俺も翔を殴ってて
あっちゃんが止めに
入ってくれたからおさまった。
「…もういいよ」
「…はっ?」
「…もう…いい。
俺には幸せにしてやれない」
そう言い翔は走り去った。
やっぱり言わなきゃ良かった
のかもしれないな。